オペラ「トゥーランドット」を見たのはもうずいぶん前。
なんとドイツで見た。
ご主人の転勤についてベルギーにいた友人のところに遊びに行ったとき、
「今夜はこれを見に行くから」といわれて、オペラのストーリーをプリントアウトした紙を渡された。
車で1時間ほど走って国境を越え、ケルンに行ったことまではわかっているのだが、
どの町でオペラを見たのか記憶が定かでない。
もっと定かではないのは、オペラの内容だ。
日本人の私が、ドイツでイタリア語のオペラを見るのか。
しかも舞台は中国・紫禁城だ。
「誰も寝てはならぬ」と歌われたところで、わたしは時差ボケも手伝って終始夢うつつだった。
ピン・ポン・パンとかいうふざけた名前の道化風の3人組が出てきたことは覚えている。
トゥーランドット姫という美しく気位の高い姫を争う話で、
謎解きに勝っても結婚を渋る姫に、王子が「夜明けまでに、私の名前を当てろ」と条件を付けたために、
姫は夜が明けないようにと、「誰も寝てはいけない」というお触れを出した。
「誰も寝てはいけない。でも夜が明ければ(名前を知れば)あなたは私のものだ」と歌う王子。
「Nessun Dorma (誰も寝てはならぬ)」 by Pavalotti
結構強気に勝ち誇った歌詞。
もし姫が名前を当ててくれなかったら、僕は死ぬよ、
姫は名前がわからなければ国民皆殺しよって言ってる物騒な場面なのに。
でも彼には、姫が自分の名を知れば、心を開いてくれるという自信があるのだ。
なぜなら、彼の名は「愛」。
く~っ、オペラってどうしてこう赤面するような単純な話が多いのかしら。
そう思ってオニュ君の歌唱を聴くと、またちょっとキュンとするし、感動する。
メロディも低いところから始まって、どんどん盛り上がっていくんだけど、
どうなるかわからない自分の運命の夜に、
それでも「キミはオレのものだ」(by キュヒョン)と高揚していく王子の気持ち。
パヴァロッティおじさんのような恰幅のいい、からだ全体がこれ楽器みたいなイタリア男が、
「なんだかんだ言ったって、お前は俺のものだぜ、ハニー♡」と歌うのと違って、
若くて細いオニュ王子が苦労して勝ち残って、美しい姫を手に入れる寸前まできて、
全身をふりしぼって歓喜の声を張り上げるのがなぁ。
美美しい。
クラシックの発声とアイドルの曲の発声は全然違うと思うけど、
この名曲を東京ドームのあの場所で歌おうというチャレンジが素晴らしいよね。
聞いている若いペンにも新しい世界を開いてくれたと思う。