キュヒョンの声を評して、
キャラメル・マキアートのような甘い声とよく言われる。
確かに高い声も低い声も、とろけるように甘い。
低音はどこまでも穏やかで、高音は気持ちいいほどのびやかだ。
聞いていて気持ちよくはなるけど、酔いはしない。
そこが、お酒ではなくキャラメル・マキアートである所以かも。
でも、あの甘ったるさはクセになる。
今回の日本ツアー、2回目となる幕張の初日。
収録が入っていたせいか、前回のような「声の調子が・・・」という泣き言はあんまりでなかった。
ただし調子は悪かったらしい。
でもそんなことはどうでもよかったくらい、全力で歌いきった公演だったと思う。
最終公演で追加公演ということもあって、
会場のほとんどはリピーターだったと思う。
最初のVCRが始まっても横浜公演の時のようにいちいち反応せず、会場は静かだった。
ツアーの最終公演、もしかして入隊前最後になるかもしれないソロ公演でのキュヒョンを、
落ち着いて聴こうとでもするかのようだった。
ステージには薄い幕が下りている。
そこがスクリーンとなってVCRが流れ、スポットライトが当たるとキュヒョンの姿が浮かび上がり、
客席とは1枚の幕に隔てられたままオープニング曲を歌う。
この公演の主役はキュヒョンその人ではなく、「声」であるということを表しているようだ。
キュヒョンは公演の途中でももう一度この幕の向こうで、
それもスクリーンに雨の風景を映し出した向こうで歌うのだが、
演出というよりは、「高貴な人の姿は直接見ない」という日本の古いしきたりを思い出した。
御簾越しに、淡い光にぼおっと浮かび上がる尊い姿をしのびつつ、
漏れ聞こえる声をありがたく拝聴した昔の人たち。
「Knick Knack」というツアータイトルは「小さな小物」「骨董品」という意味だそうだ。
これまでウネのツアーに「びっくり箱」「GIFT」、スパショのに「宝さがし」、
KRYには「Phonograph」というテーマを付けてきたマサオさんが、
セットリストに入っている曲にはいろんなタイプのがちりばめられ、
あんな曲もこんな曲も自在に歌うキュヒョンのツアーに付けたタイトルだ。
選曲も雑貨店に置かれる一つ一つのように、ていねいに選ばれたのだと思う。
ツアーの各地ではリクエストにも応え、上位2曲ずつを歌ってきた。
幕張ではこれまでのリクエスト曲を全部歌うというサプライズ。
こんな脈絡のない曲をメドレーにして歌うって、編曲も大変だけど、
歌う方はもっと大変だろうと思う。
最初に韓国曲のメドレー。
「7年間の愛」「記憶の習作」「野生花」のサビだけをメドレーにしたあとの、
キュヒョンの疲れっぷりがすごくて、その場にへたり込む。
本当に歌ってからだ全体の力を声にして歌うんだなと思った。
普通はこの重たい3曲をメドレーにしたりしないでしょう。
J-POPのメドレーはもっと脈絡がなくて、
「糸」「M」「奏」「Pop Star」と曲調が全然違う。
これ以外にもシャ乱Qあり、クリス・ハートあり、TUBEあり、ゆずありのセトリで、
日本で出した新曲もすごくJ-POPっぽい。
キュヒョンも日本の曲は歌詞がいいですねって言って歌うんだけど、
ほかの歌手、ジェジュンもジュンスもよく日本語の曲を歌う人は、みんなそういう風に言う。
どなたかキュヒョンにものすごくいい日本の曲を書いてくれる大御所はいませんかね。
リョウクもキュヒョンも、それからちょうど同じ時期にソウルでコンサートをやっているイェソンも、
みんなセトリにSJのダンスコーナーを入れている。
イェソンのはまだ見てないけれど、みんなちゃんと踊れている。
イェソンのダンスもキレキレとツイッターで上がっていた。
グループ内では「役割」が決まっているから、表面に出ないけど、ちゃんと踊れるということはみんな誇示したいみたい。
SJで踊っているときはダンスは注目されないし、
ダンスではどうしても「華」がある方に目が行くから、気が付かないのかもしれないけど、
歌えるから踊れなくてもいいとは思ってないようだ。
これまでアンコールでは客席を回ってきたキュヒョンだけど、
ツアー中一番大きな会場である幕張イベントホールでは、アリーナの外周を回るトロッコが出現した。
スタンド席の1列目がアリーナの最前列よりも本当に近かったんじゃないかと思う。
私の席はアリーナのAブロック、それも外周に近かったので、トロッコも近かったけど、
パシフィコ横浜での公演も見たけど、
キュヒョンには大きな会場が似合っていると思う。
会場の本当に上の方、隅の方にいるファンにまで気を配り、視線を送り、手を伸ばすから、
そこまで歌に込めた気持ちも届くのだ。
背も高くて、手足も長いし、顔つきもはっきりしているので、遠くまで表情や動きがよく見えるし。
影響力ってその人の近くにいる人には届くけれど、そこで止まってしまう、波及していかない人というのはいる。
反対に、意図しなくてもどんどん広がっちゃう人も。
キュヒョンは彼が声に出して空気に伝えた振動を遠くまで届けることができる人。
それは「声がいいから」というだけじゃなくて、
彼自身がいつも持っている姿勢だとか、行動だとか、歌うことに対することだろう。
有名なエピソードだけど、事故に遭ったとき気管を切開することになって、
歌手だから“のど”は切らないでってお願いしてくれたお父さんに本当に感謝する。