ジュンスが歌う「その男」はリョウクともまた違う、
深い味わいがあった。
こういうシンプルな曲は、うまさも出るけど、
歌う人の性格も出るようだ。
やさしさとか、強さとか。
ミュージカルをやる前のジュンスなら、こういう風には歌わないんだろうなと思いながら聞いていた。
もっとまっすぐに歌っただろう。
ミュージカルのせいで歌い方が変わったのか、
それとも歌にいろんなものを織り交ぜるようになったのか。
以前の歌い方もすごく好きだったし(もうああいう風には歌わないんだろうなと思うけど)、
今は今で、また歌詞がわからないなんて言うのを凌駕する余韻がある。
誰を思い浮かべて歌ってんだよ~と心の中でヤジを飛ばしながら。
昨日、東京国際フォーラムのバラコン、最終公演。
同じ日の早朝にあった世界フィギュア2016の男子ショートプログラムでは、
演技前の公式練習で、他国選手にぶつかりそうになっていらだつ羽生結弦君の姿があった。
「頭の中がぐちゃぐちゃだった」まま、SPの演技に臨んだ羽生君。
演技しながらその頭の中をどう整理したのか、最高得点で1位に。
オープニングの自分の声がマイクに入っていないということを知って、
2曲歌ったあとで、会場の雰囲気(ふにんき!)を察し、
1曲目を歌いなおしたジュンスの気持ちはどうだっただろうか。
2曲目を歌って「2曲、どうでしたか?」とトークにはいったときの会場の反応はブーイングに近かったが、
その流れのなかから、もう一度オープニングの気持ちへもっていくのは大変だったのじゃないだろうか。
ましてミュージカルの曲で、役の気持ちにも入り込んでいたし、
背後のセットは変わってしまっているし。
その場で「もう一回歌う」と決めて、
羽生君は演技を終わって、大きな雄叫びを上げたけど、
ジュンスはにっこり笑っただけだった。
会場の拍手は、羽生君が挙げた110点を超えるものだっただろう。
1日2回公演をするのは初めて、
昼の12時半からコンサートをやるのも初めて、
オープニングのマイクの音が入らないなんて言うアクシデントも初めてと言っていたジュンス。
事故には必ず原因がある。
2回公演のせいで直前のリハーサルができなかったことにも、
音響スタッフのミスを呼び込んだかもしれない。
いつもと違うことをやるときは、いつもより慎重にならないといけないのだ。
ジュンスはこういう時、
担当者を責めるタイプなのかな。
確認しなかった自分を責めるタイプなのかな。
誰も責めないのかな。
「明日は気をつけよう」と言いようのない最終公演だからな~。
私は2階席の前の方で見ていて、本当にジュンス歌っている姿しか見えなくて声は聞こえなかったので、
ありえないでしょと思った一人だけど、
激しいダンス曲の音が飛んだのとはわけが違う。
バラードコンサートで、厳かに始まったオープニング曲だから。
でもそういうハプニングが起きたときにどうやってその場を収めるかで、
その人の度量というものが出ると思う。
会場の不穏な雰囲気(ふにんき)を察してからのジュンスは切り替えが早かったし、
何より、歌うことでその場を抑えた。
イヤモニを通してスタッフとの確認はあったと思うけど、
1曲目をもう一度歌って、「3曲歌ったけど、どうでしたか?」と軌道修正したのは見事だった。
ミュージカルは本当に観たいなと思わせる前半。
前半にミュージカル曲をいっぱい、それも「デスノート」の曲を数曲持ってきたのは、
日本では公演してないということもあっただろうけど、
日本で歌ってみせる(誰に?)という意味もあったと思う。
韓国オリジナルじゃないミュージカル、日本でも公演しているミュージカルを日本でやるには、
日本語っていうのが絶対条件なんだろうなあ。
韓国のキャスト、スタッフ、装置を全部持ってくるより、
ジュンス一人が客演した方が楽だしなあ、などと思いながら見ていた。
コンサートも座りながら見ていると、いろいろなことを考える。
いつになくおしゃべりが長かったジュンス。
自分の考えていることを、なんとかして日本語で伝えようとしているかのようだ。
時々、どうしてそんな表現を知ってるの?と思う言葉を発して、
会場がざわつくのを敏感に察知する。
「こんがらがる」という日本語をさらっと言って見せて、拍手をもらってうれしそうにする。
私は「単語」よりも、言葉と言葉の間のつなぎがスムーズなので驚いた。
「なんていうか、その~」とかそういう。
ジュンスの歌については、いまさらここでどうこう言うまでもないけど、
東京国際フォーラムの音がいいのにはびっくりした。
フォーラムとパシフィコはいつも席が悪くて、
「遠い」「小さい」「見えない」というイメージしかなかったんだけど、
座って聞けばこんなにいい感じかと。
もっと小さいホールなら、もっといい音響のところはいくらでもあると思うけど、
ジュンスのコンサートは、いつも体育館みたいなところばかりだったので、
(前回は野外だし)多少の音割れは慣れっこだったけど、
こんなにいい感じなら、ジュンスもまたこういうところでやりたいと思うに違いない。
何度も言うけど、オーチャードホールとかに立たせてあげたいなあ。
それとジーニータイムは、純粋にファンサービスでやってるのか、
ファンがどういう曲を歌ってもらいたいと思っているのかというリサーチのためにやってるのかわからないけど、
たまにはコンサートの流れとは関係なく、「ジュンスが歌ってみたい曲」をやってみるのもいいと思う。
どんな曲でも上手に歌うジュンスだけど、実はどういう曲が好きなのかなとか、
最近どういう曲を聞いてるのかとか、そういうのも知りたいかな。
徐々に、徐々に、かなり大胆に、5人時代の曲をはさみ込んでくるけど、
昔のアルバム曲まで、よく覚えているなあと感心する。
本当はどの曲が好き?と聞いてみたい。
そしてやっぱりダンス曲が好きかなあ。
これを歌うなら、アリーナとかおっきな会場だよね。
フォーラムの2階、すごく揺れて怖かったもん。